
当サイトをご覧いただきありがとうございます。
私は、就職氷河期の2001年に中古車買取販売「ジャック」(現カーチス)に入社し、15年間買取・販売の現場および間接部門で仕事をさせてもらいました。
その中で得た経験や知識などをもとに、中古車買取・販売時における各種情報を発信しています。内容については基本的に各販売店(買取店)への訪問をベースに得た情報をもとに記事作成をしています。
様々な情報が飛び交う昨今ですが、あまり知られていない情報や最新の情報を発信することを心掛けており、中古車買取・購入時のひとつの参考情報として役に立てば幸いです。
私の所属していた「カーチス」は創業以来9回も社名変更するという、上場企業としては極めて珍しい変遷をたどり、よく社内は混乱していました。当サイトの記事とは直接関係はありませんが、このような会社もあるという備忘の面も含めて、会社の変遷歴を下記に記載いたします。
上場企業最多の社名変更9回!激動のカーチス
私が所属していたジャック(現カーチス)は、約10年の間に敵対的買収も含め5回の買収がなされ、その内の買収した4社がいずれも経営破綻するという上場企業としては極めて稀な経歴があります。しかも、創業者を含む経営トップが4人も逮捕されました。
また、下記のように創業以来9回もの社名変更をしており、上場企業としては最多とのことです。(名誉なことではありませんが)その度に社員は振り回され、もろもろの作業に追われました。
私が入社した当時は情報商社という触れ込みで、ベンチャーとして新進気鋭の企業で勢いがあり同期入社も約120名ほどいました。しかし、経営陣が目まぐるしく変わる中で、私の退職時には同期は4人にまで減少しました。
ビッグモーターの一連の不正事件で退職者が増加しているという話があるが、過去のカーチスの比ではないと感じ、そのくらいカーチス社員の入れ替わりは激しいものでした。
2001年6月 渡辺登会長逮捕
創業者である渡辺登会長が突然業務上横領で逮捕されましたが、当時入社して日が浅く末端の社員であった私は、会長の姿を見たこともなく実感はほぼありませんでした。
横領額は100億円以上ということで、社会のなんたるかもわからない当時の私には想像もつかない金額でした。
会長逮捕により役員の多くは入れ替わり幹部社員の退職はかなりありましたが、中古車の販売や買取を行っていた現場は特段の影響なく日々の業務が淡々と進んでいました。
当時の販売店は夜10時まで普通に営業しており、みな朝も早くとにかく忙しくしていました。その前は夜中の4時まで営業していたということで、先輩方はほとんど寝ずに仕事をしていたということです。。今では考えられない勤務形態でした。
2005年9月 ライブドアによる買収
当時の大株主が株を売却するという意向に名乗りを上げたのが、堀江貴文氏率いるライブドアでした。株価は急騰し100億円超えの資金も入ってきたことで社員は浮足立っていたように思います。2006年1月には「ライブドアオート」と社名変更し、堀江氏が出演するCMも流れるなど世間での知名度も一気に上がりました。
ライブドアからライブドアオートの社長として送り込まれた羽田社長はカリスマ性があり、一般の社員にも気さくに声を掛けてくれたりと、人気も高く、業績が低迷していた会社が一気に変わる様相を呈していました。
2006年1月 ライブドアショック堀江氏逮捕
元旦の1月1日に社名変更し、知名度も上がりかけ滑り出し好調かと思われていた矢先の1月16日にライブドアの堀江社長が証券取引法違反容疑で逮捕されるという急転直下の出来事が発生します。
当時私は小模店舗の店長でしたが、このニュースを機にすでに契約済の顧客から突如キャンセルされたり、クレームの電話が入るなど、今までにない対応に追われ、寝耳に水の事態でした。
堀江社長の知名度や実行力に期待していた社員も多く、私もかなりショックを受けた記憶があります。
2006年8月 カーチスに社名変更
ライブドアショックの影響もだいぶおさまっていたものの、ライブドアの名前が入った社名は流石に印象が悪いということで、新たに「カーチス」という名前に社名が変更されました。
「car(車)」と「arch(橋)」をかけた造語であるという説明だったが当初はなかなか馴染めず、元の「ジャック」のほうが良いと多くの人思っていました。
2007年1月 ソリッドアコースティック買収
ライブドアショックに伴い、ライブドアが保有する当社株式を売却するにあたり、買収に名乗りを上げたのは「ソリッドアコースティック」という音響関連事業を手掛ける会社だった。
「ソリッドアコースティック」はヤマハの創業家一族が立ち上げた会社であり、今度こそ会社が良くなるかと社員は思いましたが、この買収は「ソリッドアコースティック」と「リーマンブラザーズ証券」がカーチスの保有する高額のキャッシュに目を付けた、資金奪取買収でした。
実際、買収してすぐの1月12日にはカーチスの保有する120億円を親会社となった「ソリッドアコースティック」に担保提供する決議がされ、そしてその後は「ソリッドアコースティック」が借り入れしていた「リーマンブラザーズ証券」に渡ることになり、カーチスの株も「リーマンブラザーズ証券」に渡ることになりました。
その結果、2007年3月期決算では、カーチスは178億円もの経常損失を計上することになります。その時の売上は365億円であったため驚愕の赤字です。
当時は何が起こっていたのかさっぱりわからなかったが、後になって知ってみるととんでもない話です。元々「ソリッドアコースティック」は中古車販売にはなんのシナジーも無く、最初からカーチスの資金を奪い取る目的だったのです。
CMS(キャッシュマネジメントシステム)という手法を巧妙に用い裏で協力をしていたのは「リーマンブラーズ証券」であるとされており、外資系証券はやることがえぐすぎます。120億円もの資金を持っていかれたカーチスは訴訟を起こし、その後数年にわたり係争を続けますが、「ソリッドアコースティック」の破産もあり、結局戻ってくることはありませんでした。
今になって思えば、当時100億円を超える資金がライブドアから入ってきた時点で、店舗改装やIT、広告等に積極的に投資を行っていたら、会社は大きく変わっていたかもしれません。後付けではなんとでも言えるかと思いますが。
2007年12月 ケンエンタープライズによる買収
親会社「ソリッドアコースティック」の経営悪化に伴い、カーチスの株を実質的に保有していたリーマンブラザーズが株を売り出し、買収に名乗りを上げたのが、大島健伸氏率いる貸金業を行う「SFCG」(旧商工ファンド)でした。
「ソリッドアコースティック」の買収で散々な目にあった経営陣は、またまたシナジーが特に感じられない別業種「SFCG」からの買収に猛反発し、全社員から反対署名を集めるなど抵抗を重ねましが、抗えず買収は成功してしまいました。
当時末端の一社員の私も署名したがなんら意味はありませんでした。この買収は当時上場企業としては敵対的な買収の成功例として第一号となりました。
「SFCG」の会長である大島健伸会長はカーチスの経営にも積極的に入り、幹部達に矢継ぎ早に指示を出していた。ライブドアの羽田社長とは違ったカリスマ性というか、とにかく喜怒哀楽が激しく、予算の数字に到達していないと幹部を怒鳴り散らしていました。
数字に対する進捗の追い方はすさまじく、一代で巨大企業を創出したオーラというか凄みを纏っていました。SFCGの人から話を聞くと、私は見ることが無かったが「背負い投げ」や「飛び蹴り」もよく幹部は喰らっていたとのことです。。実際、空手の有段者で日々トレーニングも重ねていたようです。
「豆腐の角に頭をぶつけて死ね!」とか「そうめんで首吊れ!」とか罵声を浴びせられていましたが、幹部間の飲み会では面白おかしく言われていたのが、なんだか滑稽ではありました。
カーチスの現場としては、会長の指示により不採算店舗が次々閉鎖されるなど混乱が続き売上も減少していきました。
対して、SFCGの社員は優しい社員が多かく、よく飲みにも連れて行ってもらい、会長の武勇伝(?)などの話で盛り上がっていました。SFCGの社員は良く働き、いつも早朝から深夜まで会社で作業をしていました。そのため、我々も同様の勤務形態を強いられていました。
2009年2月 SFCG経営破綻~日本振興銀行による買収
大島会長のもと、連日長時間労働に勤しんでいた最中、突如SFCG経営破綻のニュースが飛び込んできます。ライブドア、ソリッドアコースティックと親会社の経営破綻を経験してきてきた社員からは、またか・・!という思いでした。
SFCGの経営破綻は当時ニュースでも大きく扱われ、日本橋NBFセンタービル本社前にはテレビ局も散見され、実際にコメントを求められる社員もいました。
SFCG経営破綻に伴い、買収に名乗りを上げたのが、日本銀行出身で金融コンサルタントの木村剛氏率いる日本振興銀行でした。木村剛氏は日本振興銀行による融資を契機に、経営難に陥っていた中小企業を次々と買収し「振興銀行ネットワーク」という一大グループを形成していました。
木村剛氏による振興銀行ネットワーク構想は壮大なものであり、いずれはメガバンク規模にまで拡大するとの話には、社員一同驚いたが過去の買収劇に振り回されてきた社員は懐疑的な目で見ていたと思います。
カーチスも振興銀行ネットワーク一員としてグループ入りし、他の振興銀行ネットワーク企業とのシナジーを模索する日々となった。ただ、経営難に陥っていた企業同士ということもあり、また完全な異業種のシナジーということで大きな成果が出た協業はありませんでした。
2010年9月 日本振興銀行破綻
日本振興銀行傘下で振興銀行ネットワークと協業しながら、再建を図っていたカーチスだが、今度はなんと日本振興銀行が破綻してしまいました。まさか銀行が破綻するなんて。。と思ったが、ほかの社員はまたか。。という感じで大きな混乱はありませんでした。
日本振興銀行が保有していたカーチスの株式はその前に手放されており、ようやくカーチスのプロパー経営陣により経営が進められていきました。
SFCG時代に不採算店舗を大幅に削減した効果もあり、徐々に利益が出はじめ2010年度の決算では約11億円の利益を出すまで回復しました。
2012年9月 KABホールディングスによる買収
カーチスのプロパー経営陣により順調に再建を進めていた最中、今度は美容健康商品製造・販売を手掛ける「レダ」による株式取得がなされ、レダの創業者である加畑雅之氏が会長となり、経営に参画することになります。
加畑会長も大島会長とはタイプは異なるが、猛烈に数字を追う劇場型支配経営者であり、数字の進捗が予算通りに進んでいないと容赦なく幹部を叱責していました。自身も公言していました、猛烈に働くことを信条とし、土日もなく本当に365日に働くような経営者でした。
加畑会長は政財界等に顔が広く国外にも人脈を有することから、直近では海外企業との協業により、各種提携を進め売り上げ拡大を模索しています。
終わりに
これだけ見てくると、よくまあ色々な事件というか悲劇があったなと改めて思います。ただ、買収した会社(トップ含)はソリッドアコースティック以外、本気でカーチスの業績を伸ばそうとしていました。
経営者も個性的で色々学ばせてもらったとともに、貴重な体験をさせてもらいました。
給料も個人的にはそんなに不満はありませんでした。
カーチスの社員は良い人が多く職場の人間関係は悪くありませんでした。手前味噌かもしれないが、営業の接客姿勢は他社よりも良かったと思います。
カーチスは創業~10年くらいまでは業界を引っ張ってきた存在であり、近年は競合のガリバーやネクステージに水を開けられていますが、過去の勢いを取り戻し復権してもらうことを願っています。