BYDAUTO横浜中央閉店で苦戦が続くBYDの展望を解説

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2023年の日本上陸以来、完成度の高いEV(電気自動車)と圧倒的なコストパフォーマンスを武器に国内シェア拡大を狙っていた中国のEVメーカー「BYD」が予想以上に苦戦しています。

販売数の低迷のみならず、日本における旗艦店「BYD AUTO 横浜中央」が2025年12月閉鎖されるなど、今後の国内攻略への不透明さが如実に表れてきています。

車両の完成度は極めて高く、コストパフォーマンスは国産車を凌駕するにもかかわらず、なぜ、旗艦店「BYD AUTO 横浜中央」を閉鎖するなど苦戦が続いているのでしょうか。

本日は、BYDが現在直面している苦戦の理由と、起死回生の一手とされる軽EV「RACCO(ラッコ)」の展望についてみていきます。

販売台数は伸びているが、店舗当たりは月に約5台と低迷

2025年におけるBYDの国内販売台数は、前年同期比68%増の3,742台ということで、前年比では大きく増加しています。

ただ、BYDは現在日本国内に約60店舗を展開しており、1店舗あたりの販売台数に換算すると月に約5台と非常に少ないです。

  • 1店舗あたりの年間販売台数:約62台

  • 1店舗あたりの月間販売台数:約5.2台

BYDのディーラーは競合ディーラーが立ち並ぶ好立地の場所にあるところが多く、「都市部の好立地で月5台しか売れない店」を維持するのは、ビジネスとしてほぼ不可能です。新規参入ということで、既存の顧客からのメンテンナンス等の売上も見込めません。

直近では、「オートバックス」や「ヤナセ」などの国内大手と提携し、既存店と隣接する形で敷地を確保するケースもありますが、それでも単独の収益としては大きな赤字と推測されます。

テレビCMも積極的に打つなど、プロモーションは十分とみられる中、苦戦が続くには下記のような理由があります。

なぜ「いい車」なのに売れないのか?3つの構造的理由

BYDの「SEAL」や「シーライオン7」などの車種を実際に確認・試乗したりすると、その質感の高さや最新技術に驚かされます。元アウディのデザイナーが手掛けている外観のデザインも悪くありません。それでも国内で販売が伸び悩むのは、大きく以下の3点の理由があります。

売れない理由① 日本特有の「住環境」やインフラ問題

都市部ではマンション住まいが圧倒的に多く、個人で充電設備を設置できる人は限られています。一方で地方に目を向ければ、一戸建ては多いものの、今度は「広大な移動距離」に対して急速充電網が脆弱すぎるという課題に直面します。

EVを検討しているが、マンションには充電設備が無いとか、近所の充電スタンドがいつも埋まっているから諦めるという声は多いです。地方では、そもそも充電設備がどこにあるのか?とわからない(調べるのも面倒)という課題もあります。インフラの問題は、BYDという一企業が努力して解決できる問題ではありません。

売れない理由② ブランドととアフターサービスへの不安

車そのものの性能が良くても、「中国ブランド」に対する日本消費者の目は依然として慎重であり、特に下記のような点について懸念があります。

  • 耐久性の未知数: 5年後、10年後のリセールバリューやバッテリーの劣化具合が不透明。

  • 販売網の薄さ: 国産メーカーが全国数百拠点の整備網を持つのに対し、BYDはまだ数十拠点。故障時や事故時の対応に不安を感じるユーザーは少なくありません。

  • 撤退リスク:BYDは世界でシェアを拡大しているものの、韓国のヒュンダイ(ヒョンデ)のように上陸後撤退する可能性もあり、ユーザーは「パーツ供給やメンテナンスが受けられなくなるのでは?」という懸念もあります。

国内のユーザーは「安心」を優先するとともに、リセールバリューについてもかなり厳しい目で見ます。その点、国内競合車種に比べて劣るBYDに対して、価格や車両性能のみで購入まで踏み切る人が少ないという現状があります。

売れない理由③ 補助金が少ない

2025年現在、政府のEV補助金(CEV補助金)の算定基準は、単なる航続距離だけでなく「メンテナンス体制」や「充電インフラへの貢献度」が重視されるようになりました。 その結果、トヨタや日産といった国産勢はもちろん、インフラ投資を加速させるテスラと比較しても、BYDへの補助金額は少額に留まっています

直近で発表された2026年のCEV補助金ではトヨタ・日産・テスラなどの車種で約130万円と大きく増加となったにもかかわらず、BYDは35万円(据え置き)と差が大きくなりました。この差はユーザーに取って大きく、意思決定のマイナス要素となっています。

BYD軽自動車EV「RACCO(ラッコ)」への期待と、立ちはだかる「競合の壁」

BYDは2026年夏頃にかけて、日本市場に特化した軽自動車規格のEV「RACCO」を投入し、巻き返しを図る予定です。徹底的に日本の軽市場を研究したというこのモデルですが、これについても下記3つの理由により「前途多難」であると予測しています。

理由① 強力なライバルの存在

軽自動車市場には、国内ユーザーが絶大な信頼を寄せるホンダやスズキなどのメーカーが君臨しています。

  • ホンダ N-VAN e: / N-ONE e:

  •  スズキ e-SKY / e-SPACIA(予定):

  • 日産 サクラ

  •  三菱 eKクロスEV

中でもホンダやスズキは直近で新型モデルを投入(予定含む)しており、従来日産サクラが主流であった軽自動車EV市場の競合が激化してきています。

また、軽自動車ユーザーは、性能スペックよりも「近所の馴染みの車屋で見てもらえるか」「スライドドアや室内の使い勝手はどうか」などを重視します。

そのような中、新規のBYDが割り込むのは至難の業です。

理由② 販売網の圧倒的な格差

軽自動車の主戦場は「地方」です。スズキやダイハツ、ホンダは地方の至る所に整備工場(サブディーラー)を持っており、これが販売網の強みとなっています。

一方でBYDは都市部を中心とした展開であり、軽自動車を買い求める層にとって、「故障した時に100km先の拠点まで運ばなければならない外車」は選択肢に入りません。

理由③ 補助金の不透明さ

軽EVにおいても、前述の補助金格差が適用さかなれる可能性があります。

もし国産の軽EVよりも手出しの金額が高くなるようなことがあれば、コストパフォーマンスを武器にするBYDにとってかなりのマイナス要素となります。

最後に

車両単体のコスト対スペック勝負では、正直BYDに軍配が上がるかもしれません。しかし、自動車とは「購入・維持・売却」という数年間にわたるライフサイクル全体で評価される要素が大きいです。販売台数の伸び悩みと店舗の閉鎖は、BYDが「日本のライフサイクル」にまだ適応できていないことの証左とも見えます。

今後、BYDが日本で生き残るためには、単なる新車販売だけでなく、「認定中古車制度の確立」による残価保証や、地場整備工場との提携によるアフターフォローの拡充といった、国内メーカーが行ってきた泥臭い「信頼積み上げ型」の活動が必要と思われます。

BYD AUTO横浜中央店の閉鎖は、単なる撤退ではなく、より効率的な運営を模索するための「戦略的撤退」であるとも見られていますが、消費者の信頼を勝ち得て販売台数を伸ばす道のりは、当初の予想以上に険しいものになりそうです。

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