事故を起こした車は全て事故車となり、買取価格も安くなると思われていませんか?
実は、乗っている車が過去に事故を起こしていても事故車となる場合と、ならない場合があります。
筆者の査定時の経験上、ユーザーが事故車と思っている車は、事故車でないことがほとんどです。
なぜなら多くの場合、事故車とならないバンパー、ボンネット、ドア、トランクなどを修理しているだけの車がほとんどのためです。
本日は、中古車業界での事故車の定義と、車をぶつけた際に事故車となるかどうかの判断基準とともに、買取に出す際に高く売却するために押さえておきたいポイントを中古車業界に15年所属した筆者がご説明します。
事故車の定義:骨格部位を修復した車
事故車とは修復歴車とも言い、日本自動車査定協会、自動車公正取引協議会、日本中古自動車販売協会連合会で統一基準が定められています。
その基準から事故車とは、車の基本骨格(フレーム)部位を交換若しくは修復した車、とされています。
事故車(修復歴車)に該当するのは、下記のような骨格(フレーム)にあたる8つの部位を交換または修復した場合です。
| # | 骨格部位 |
|---|---|
| ① | フレーム(サイドメンバー) |
| ② | フロントクロスメンバー |
| ③ | フロントインサイドパネル |
| ④ | ピラー |
| ⑤ | ダッシュパネル |
| ⑥ | ルーフパネル |
| ⑦ | ルームフロアパネル |
| ⑧ | トランクフロアパネル |
標準的なセダン型の骨格を図示すると下記のようなものとなります。形状は異なりますが、どんな車にもだいたいこちらの骨格があります。
ここで重要なことは、上記の部位以外の箇所を交換、修復しても事故車にはならないということです。
つまり、基本骨格部位をカバーしている、ボンネットやドア、フェンダー、トランクなどといった部品は交換、損傷していても事故車とはなりません。ドアを交換したから事故車だと思われているユーザーも少なくありません。
下記の画像の車はドアが激しく損傷していますが、基本骨格部位まで損傷が及んでいないため、事故車には該当しません。
よくある修理は、ほとんど修復歴にならない
事故の種類で圧倒的に多いのは追突です。
追突事故はバンパーやトランクリッドの交換・修理で直ることがほとんどで、この場合は事故車になりません。その他、ドアを傷つけた、ボンネットのへこみを直した、といったケースも同様です。
| よくある修理 | 修復歴になるか |
|---|---|
| バンパーの交換・修理 | ならない |
| ドアの交換・板金 | ならない |
| ボンネットの交換・へこみ修理 | ならない |
| フェンダーの交換 | ならない |
| トランクリッドの交換 | ならない |
| ピラーの修理・交換 | なる |
| フレーム(サイドメンバー)の修正 | なる |
| トランクフロアの修理 | なる |
修復歴があると査定はいくら下がるのか
修復歴車と判定されると、無事故車の買取価格よりおおむね3割程度安くなります。100万円の車であれば60〜70万円程度です。
損傷の程度による幅もあります。
| 損傷の程度 | 下落幅の目安 |
|---|---|
| 軽~中度 | 約30% |
| 重度 | 50%以上 |
| 車種 | 骨格損傷時の減額目安 |
|---|---|
| 軽自動車 | 20万円前後 |
| 普通車 | 30〜50万円程度 |
金額が大きいからこそ、該当するかどうかを正確に把握しておいたほうが良いです。
修復歴の判定が分かれるグレーゾーン
骨格を修正したものは修復歴車となりますが、ですが、車の状態によっては、修復歴とするか否かの判断が非常に微妙なケースがあります。
具体的には、比較的軽い事故で、骨格に少しダメージは入っているものの、大きな損傷とまでは言えないという状態です。パネルが交換されているわけでもなく、
明確な修理跡があるわけでもない。わずかに歪んでいる、という程度です。
骨格の事例には、次のようなケースです。
- インサイドパネルのひずみ(ゆがみ)
- トランクフロアのひずみ(ゆがみ)
- ピラーのひずみ(ゆがみ)
この判断が非常に難しく、査定員の判断も分かれます。
オークションの検査員でも判断が分かれる
中古車はオートオークションに出品される際、専門の検査員が車両を検査して修復歴の有無を判定します。
ところが、こうしたひずみレベルの案件は、オークションの検査員でも判断が分かれることがあります。同じ車を見て、ある検査員は修復歴なしと判定し、別の検査員は修復歴ありと判定する。実際に起こります。
筆者も査定の現場で、相当迷う場面がありました。骨格を覗き込んで、これはひずみと言えるのか、単なる製造時の個体差なのか、判断がつかない。そのようなケースは意外と多いです。
判断が分かれるということは、業者によって提示額が大きく変わるということです。
修復歴あり/なしの差はおおむね2~3割。100万円クラスの普通車なら20〜30万円です。同じ車なのに、A社は無事故車として評価し、B社は修復歴車として評価する。そんな事態が現実に起こります。
そのため、査定依頼する際は複数の業者に確認してもらったほうが良いです。
近隣の複数店舗をまとめて探すなら、リクルート社が運営するカーセンサーネットが便利です。加盟店数No.1のネットワークから業者を絞り込んで依頼できます。
依頼する社数を自分で選べるので、1社だけに絞ることも、3社に依頼することも可能です。メールのみのやり取りにも対応しています。
グレーゾーンの車には、もうひとつリスクがあります。
契約時は無事故車として評価されたのに、あとから社内やオークションで修復歴と判定され、減額を要求されるというパターンです。判断が分かれる車だからこそ、この事態が起きやすくなります。
よって、そのようなトラブルを防ぐために減額しないと公言している業者に最終的に売却したほうが良いです。
減額しないことを明示している買取店には、たとえば次のような会社があります。
| 業者 | 取り組み |
|---|---|
| ネクステージ | 金額をはっきり提示し、契約後の減額なし |
| ウィーカーズ | 契約後、原則買取価格の減額なし/査定日から7日間の価格保証 |
| カーセブン | 「車買取安心宣言」でキャンセル料・減額に関する取り組みを明示 |
各社の詳細は下記記事にまとめています。
査定時に「事故車です」と自己申告しないで
なぜ自己申告すると損をするのか
「事故車です」と申告した時点で、ほとんどの買取店は事故車でなかったとしても事故車として評価し、値段を提示します。
稀に「これは修復歴に当たりませんよ」と教えてくれる良心的な買取店もあります。
ですが、安く買うこと(利益を出すこと)が営業マンの評価につながるという構造がある以上、事故車と申告されればそのまま事故車の価格を提示される確率が高くなります。
筆者が現場にいたときの実感としても、わざわざ訂正する営業マンは少数でした。
そして先に述べたとおり、ユーザーが事故車だと思っている車の多くは、実際には修復歴に該当しません。自己申告によって、本来不要な3割の減額を受け入れてしまうことになります。
ポイントは「自分で判定しない」ことです。修復歴に該当するかどうかは、査定士が判断する仕事です。
| ◎ こう答える | ✕ これは避ける |
|---|---|
| 「後ろをぶつけて、バンパーを交換しました」 (事実だけを伝える) |
「事故車です」 (自分で判定してしまっている) |
| 「左のドアを板金で直しました」 | 「修復歴ありです」 |
| 「修理明細はこちらです」 (資料があれば渡す) |
「たぶん骨格までいってると思います」 (推測で不利な情報を足している) |
聞かれたことには、修理した箇所を事実ベースで正確に答えてください。そのうえで、それが修復歴に該当するかの判断は査定士に委ねます。これが最も損をしない答え方です。
修理明細や整備記録が残っていれば、査定時に渡してください。正確な情報があるほど、査定士は安全側に振った低い評価をしなくなります。
誤解のないように補足しますが、「自分で判定しない」は「隠す」という意味ではありません。
板金工場で「フレームを修正した」「ピラーを交換した」と説明を受けている場合など、骨格を修理したことを知っているなら、それは伝えてください。
隠して売却すると、後から発覚した際に減額や契約解除の対象になります。
買取契約書には契約不適合責任(2020年4月の民法改正前は「瑕疵担保責任」)に関する条項があり、契約時に判明していなかった不具合について売主が責任を負う建て付けになっています。
契約後に減額を要求されるトラブルの実態と対処法は、下記記事にまとめています。
整理すると、こうなります。
- 知らないこと・判断できないことを、推測で不利に申告しない
- 知っている事実は正確に伝える
- 修復歴かどうかの判定は査定士に任せる
なお、契約後の減額を行わないことを明示している買取店を選ぶのも有効な自衛策です。
ネクステージは買取台数国内トップクラスで、金額をはっきり提示し、契約後の減額がありません。修復歴の判断で揉めたくない方は選択肢に入れておいたほうがよいです。
損傷している車は、直してから売るべきか
結論から言うと、売却前提であれば直さないほうが良いです。
修理費より査定の上がり幅が小さい
板金塗装に5万円かけても、査定額が5万円上がるわけではありません。買取店は自社の提携工場で安く直せるため、ユーザーが外注で払う修理費のほうが高くつきます。
そのまま出して、損傷分を減点してもらうほうが手取りは多くなります。
板金の跡が残ると逆効果になることもある
これは実務でよく見た話です。
安価な板金修理で色が合っていない、塗装の肌が違う、パテの跡が浮いているといった状態になると、修復歴に該当しなくても減点対象になります。
「直したのに評価が上がらない」どころか、「直し方が悪いので下げます」と言われることもあります。中途半端に直すのは、最も損な選択です。
ただし、ガラスのひび割れやライトの破損など、車検に通らない状態は例外です。この場合は直したほうが評価が上がることがあるので、査定時に相談してください。
修復歴車を高く売る方法:複数社に見てもらう
修復歴車の評価は、業者によって差が出やすいです。
理由は2つあります。ひとつは修復歴車の再販ルートを持っているかどうかで価値が変わること。オートオークションでの評価は下がりますが、輸出ルートや修復歴車を専門に扱う販売網があれば値を付けられます。
もうひとつは、前述のとおりそもそも修復歴かどうかの判定自体が分かれることです。ひずみレベルの案件では、業者によって無事故車評価か修復歴車評価かが変わります。
1社の提示額だけでは、それが妥当か判断できません。最低2社、できれば3社に見てもらってください。そして高値を出した業者の中から、契約後の減額をしないと明示している業者を選ぶのが最も安全です。
損傷箇所の写真を残しておく
修理前・修理後の写真や修理明細があれば、査定時に提示してください。
どこをどう直したかが明確であれば、査定士は不必要に安全側の評価をしません。逆に情報が曖昧だと、最悪のケースを想定した金額になります。
\ まず正しい評価を知る /
修復歴に該当するかどうかで、査定額は3割前後変わります。ネクステージは金額をはっきり提示し、契約後の減額もありません。自己判断で安く手放す前に、プロの評価を確認してください。
自走できない場合・値が付かない場合
事故で自走できなくなった車(現状事故車)は、大手買取店では評価を付けづらく、値が出にくくなります。この場合は解体・輸出ルートを持つ専門業者のほうが高くなります。
年式が古く査定額が付かない場合は、廃車買取という選択肢があります。買取価格に加えて税金の還付があるため、想像より手取りが出ることがあります。
よくある質問
Q. ドアを交換したら事故車になりますか?
なりません。ドアはネジ止めで外せる部品で、骨格8部位に含まれません。骨格まで損傷が及んでいなければ修復歴には該当しません。ただしドアの奥にあるピラーを修理している場合は該当します。
Q. バンパーを交換した場合は?
なりません。バンパーも骨格外です。追突事故でバンパーを交換するケースが最も多いのですが、これは修復歴になりません。
Q. フェンダーの交換は修復歴になりますか?
なりません。フェンダーもネジ止めの外板部品です。ただし内側のフロントインサイドパネルまで損傷している場合は修復歴になります。
Q. ピラーの修理は修復歴になりますか?
なります。ピラーは骨格8部位のひとつです。損傷がある場合や修理跡が確認されると修復歴車と判定されます。
Q. 修復歴を申告しないとどうなりますか?
知っていながら隠して売却した場合、後から発覚すると減額請求や契約解除の対象になります。買取契約書の契約不適合責任の条項に基づく扱いです。
ただし、自分で判定できないことを推測で不利に申告する必要はありません。修理した箇所を事実として伝え、判定は査定士に委ねてください。
Q. 骨格が少し歪んでいる程度でも修復歴になりますか?
ここは判断が分かれるグレーゾーンです。インサイドパネル・トランクフロア・ピラーのひずみ(ゆがみ)程度の案件は、オートオークションの検査員でも判定が分かれることがあります。業者によって無事故車評価か修復歴車評価かが変わるため、必ず複数社に見てもらい、高値を出した業者の中から契約後の減額をしないと明示している業者を選んでください。
Q. 修復歴車でも売れますか?
売れます。無事故車より3割前後安くなりますが、値が付かないわけではありません。修復歴車の再販ルートを持つ業者ほど高く評価しますので、複数社を比較してください。
最後に
一口に事故車といっても、損傷箇所によって買取価格への影響も様々です。
また、事故車と思っていても事故車ではないケースは意外と多いです。
見た目がひどいから、とか、修理代が高額だったからと思い込むより、実際に査定をしてもらい、判断してもらったほうが良いです。
修理箇所がどのくらい買取価格に影響するかは、各買取店によって評価が様々であるため、複数の買取店に査定してもらうことをおすすめします。
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