車の買取を依頼する際には、どんなトラブルが想定されるのでしょうか?
車を買い取ってもらうだけのため、トラブルなど起こらないと思われるかもしれませんが、車の買取時のトラブルは意外と多いです。
車の買取時によくあるトラブルとしては以下の3つがあります。
(1)買取契約後に契約金額の減額を要求されるトラブル
(2)複数業者との二重契約に関するトラブル
(3)入金や名義変更に関するトラブル
近年は車買取店が乱立し競合が激化していることから、強引な買い取りを行う買取店もあり、トラブルにつながるケースがあります。
ただそのような状況の中でも、契約交渉時にわずかな手間を行うだけで確実に回避することができるのです。
本日は車買取時によくある3つのトラブルと、それらのトラブル回避法を中古車買取業界に15年所属した筆者が解説いたします。
車買取でよくある3つのトラブル
買取トラブルは、大きく3つに分類できます。
| トラブル | 内容 | 起きるタイミング |
|---|---|---|
| ①減額 | 契約後に「事故車だった」等を理由に金額を下げられる | 引き渡し後〜数日 |
| ②二重契約 | 複数業者と契約してしまい違約金を請求される | 契約直後 |
| ③入金・名義変更 | お金が振り込まれない/名義が変わらない | 引き渡し後〜数週間 |
頻度・金額ともに大きいのが①の減額です。順に見ていきます。
①買取契約後に契約金額の減額を要求されるトラブル
近年は業界団体の働き掛けもあり、一昔よりは減少していますが、それでもまだトラブルになることは多いです。
減額額は買取金額の20〜30%が目安
無事故車から事故車(修復歴車)へ評価が変わると、事故の程度にもよりますがおおむね20〜30%程度価値が下がります。
100万円の買取金額であれば70〜80万円になるため、20〜30万円の減額を要求される計算です。高額車両になるほど減額幅も大きくなり、トラブルに発展しやすくなります。
なぜプロの査定士が事故車を見抜けないのか
プロが査定したのに、なぜ後から事故車だと分かるのでしょうか?
ほとんどの営業マンには、事故車を確実に見分けるだけの十分な査定スキルがありません。
優れた査定力を持ち、確実に見分けられる人もいますが、かなり少ないです。
筆者も大手買取業者に所属していましたが、慢性的な人手不足もあり、査定の研修が十分になされていませんでした。十分なスキルがないまま現場で営業活動を行っているケースは、実際にありました。
査定時の状況に起因するものもあります。
- 査定は骨格を見るのが基本|エンジンルーム内やシャーシ下回りをしっかり確認する必要があります
- 雨天や夜間は細部が確認できない|下回りは特に見づらくなります
- 査定にかけられる時間は10〜20分|この短時間で見落としが起きます
「プロなのだから正確に査定できて当たり前で、天候や時間に左右されるのはおかしい」と思われるかもしれません。ですが、これが実情です。
つまり契約後の減額は、多くの場合が業者側の査定ミスに起因しています。この前提を知っているかどうかで、交渉の姿勢が変わります。
契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)とは
では、なぜ業者のミスが売主の負担になるのか。契約書に理由があります。
大手買取店の契約書には、契約不適合責任に関する条項が入っています。これは契約の時点で判明していなかった車両の不具合について、売主が責任を負うという内容です。
つまり、売主自身が事故車だと知らずに売却したとしても、あとから事故車と判明した時点で責任を問われる、という建て付けになっています。
※2020年4月1日施行の改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に名称と内容が変更されています。古い契約書やインターネット上の情報では「瑕疵担保責任」と書かれていることがありますが、現在は契約不適合責任が正式な用語です。契約書を確認する際は、この言葉を探してください。
減額を要求されたときの3ステップ
実際に連絡が来たら、次の順番で対応してください。
ステップ1|その場で即答しない
電話口で「わかりました」と言ってしまうと、合意したものとして扱われかねません。「一度持ち帰って検討します」と伝えて、その場での回答は避けてください。
ステップ2|減額の根拠を書面で求める
どこにどのような修復歴があったのか、それによっていくら評価が下がるのか。書面での提示を求めてください。口頭だけで具体的な根拠を示せない場合、査定ミスを売主に転嫁しようとしている可能性があります。
あわせて「契約時にどのような査定を行ったのか」も確認してください。
ステップ3|納得できなければ相談する
業者との話し合いで解決しない場合は、無料で相談できる公的な窓口があります。記事後半で紹介します。
予防策①|契約書に一筆加えてもらう
最も確実な予防策です。
買取契約時、大半の業者は契約内容を説明します。説明がない場合は、こちらから求めてください。
そのうえで、「契約後の減額には応じない」旨を契約書に明記してもらうよう交渉します。契約書の特記事項欄に一筆加えてもらう形です。
応じてくれるかどうかは業者によりますが、この交渉に難色を示す業者は、そもそも避けたほうがよいという判断材料にもなります。
予防策②|クレームガード保証は入るべきか
買取業者によっては、契約後の減額を回避するための保証サービスを用意しています。ガリバーの「クレームガード保証」が代表的で、買取金額100万円の国産車で保証料は1万円程度が目安です。
| 入る場合のメリット | 不要とされる理由 |
|---|---|
| 数十万円の減額リスクを1万円程度で回避できる | 意図的に隠していなければ、そもそも一方的に責任を問われる可能性は低い |
| 後々のやり取りの手間が省ける | 本来は業者の査定ミスであり、売主が費用を負担する筋合いではない |
判断基準としては、次のように考えてください。
- 中古で購入した車で、過去の修復歴を把握していない(購入店からも知らされていない) → 加入を検討する価値あり
- 新車から乗っていて事故歴がないと確信できる → 必要性はほぼない
- 高額車両(減額額が大きくなる) → 保証料との比較で判断
クレームガード保証の詳細は下記記事にまとめています。
そもそも契約後の減額を行わないことを明示している買取店を選ぶという選択肢もあります。業界大手では、「ネクステージ」「ウィーカーズ」「カーセブン」が減額をしないと明言しています。
中でも、ネクステージは買取台数国内トップクラスで、金額をはっきり提示し、契約後の減額がないことを明示しています。減額トラブルを避けたい方は、選択肢に入れておくとよいでしょう。
②複数業者との二重契約に関するトラブル
2つ目は、複数の業者と契約が重なってしまうケースです。
なぜ二重契約が起きるのか
典型的な流れはこうです。
- 一括査定を申し込み、複数業者と査定の約束を取り付ける
- 最初に来た業者が「今日決めてくれるならこの金額」と提示し、契約する
- その後に来た業者がさらに高い金額を提示する
- そちらとも契約してしまう
- 最初の業者から「二重契約だ」と違約金を請求される
この流れは、業者側の営業手法が生み出しています。
買取店の営業マンは、他社と比較される前に契約を取ることを教え込まれています。「今日中なら」「この場で決めていただけるなら」という条件付きの提示は、比較の機会を奪うための常套手段です。
そして後から来た業者は、前の業者の金額を聞き出したうえで、それを上回る額を出します。構造上、後から来た業者のほうが高くなりやすいのです。
契約はいつ成立するのか
売買契約は、契約書に署名・捺印した時点で成立します。車を引き渡していなくても、入金がなくても、契約は成立しています。
「まだ車を渡していないから大丈夫」ということはなりません。
二重契約になってしまったら
まずは先に契約した業者に速やかに連絡し、事情を説明してください。引き渡し前であれば、業者側に大きな損害は出ていないため、話し合いで解決できることがあります。
放置して連絡を取らないことが、最も事態を悪化させます。
キャンセル理由として、「他社が高かったから」という理由では、「こちらも金額を上乗せします!」とか「契約違反です!」などと言われ業者側も態度を硬化させる場合があるため、「親戚に譲ることになった」とか「乗り続ける必要が出てきた」などの理由で納得してもらったほうが無難です。
契約後のキャンセルについては、下記記事に詳しくまとめています。
予防策としては、その日のうちに契約せず、すべての業者の査定額が出揃ってから決めることです。これだけで二重契約は起きません。「今日決めてくれるなら」という提示に応じないことです。
③入金・名義変更のトラブル
お金が振り込まれない
車を引き渡したのに入金がない、というトラブルです。
契約書には入金期日が記載されています。まずは契約書を確認し、期日を過ぎている場合は書面やメールなど記録が残る方法で催促してください。
予防策として、契約時に「引き渡しから何日以内に入金されるか」を必ず確認し、契約書に明記されているかチェックしてください。
ただ、こちらは大手買取店ではほとんどありえず、個人店などの小規模な店舗での注意事項です。
名義変更されない
名義が変わらないまま放置されると、次のリスクが生じます。
- 翌年度の自動車税の納付書が自分に届く
- 駐車違反や交通違反の通知が自分に届く
- 事故が起きた場合に責任を問われる可能性がある
予防策として、契約時に「名義変更をいつまでに完了するか」を確認し、完了後に登録事項等証明書などで確認できるよう依頼しておくと安心です。
期日を過ぎても変更されない場合は、書面で催告してください。
車の売買にクーリング・オフは使えない
四輪自動車の売買には、クーリング・オフが適用されません。
なぜ対象外なのか
クーリング・オフは、訪問販売など消費者が不意打ち的に契約させられる状況を想定した制度です。
車の売買については、消費者が十分に検討したうえで契約を結ぶものとされており、制度の対象外とされています。出張査定で自宅に来てもらった場合であっても同様です。
では契約後にキャンセルできないのか
法律上の権利としてのクーリング・オフはありませんが、実務上は多くの買取店が一定期間内のキャンセルを認めています。
契約書の内容次第ですが、大手であれば契約後3〜7日程度のキャンセル可能期間を設けていることが一般的です。また、車の引き渡し前であれば業者側に損害が出ていないため、期間を過ぎていても応じてもらえることがあります。
詳細は下記記事にまとめています。
トラブルの無料相談窓口
業者との話し合いで解決しない場合、泣き寝入りする必要はありません。
JPUC(一般社団法人日本自動車購入協会)が、車買取トラブル専門の相談窓口を運営しています。
| 窓口名 | JPUC車売却消費者相談室 |
| 電話番号 | 0120-93-4595 |
| 受付時間 | 9:00〜17:00(土日祝定休) |
| 費用 | 完全無料 |
| 対応エリア | 全国 |
| 相談実績 | 15,000件以上 |
JPUCは、車買取業界の健全化を目的に設立された一般社団法人です。業界に精通したベテラン相談員が対応し、相談内容は秘密厳守で扱われます。
受け付けている相談カテゴリ
- 減額トラブル
- キャンセル時のトラブル
- 違約金トラブル
- 未払いトラブル
- 名義変更に関するトラブル
- 自動車税に関するトラブル
- 売買契約についての疑問
本記事で挙げたトラブルは、すべて相談対象に含まれています。
また、JPUCは適正買取店認定制度も運営しており、認定を受けた買取店の一覧を公開しています。売却先を選ぶ際の判断材料になります。
※車査定サイトの申し込みキャンセルや個人情報削除の依頼には対応していません。その場合は各サイトの運営事業者へ連絡してください。
契約前に確認すべき4つのポイント
トラブルの大半は、契約時の確認で防げます。契約書で必ず見るべき箇所を挙げます。
①契約不適合責任の条項
契約後に不具合が判明した場合、誰がどこまで責任を負うのか。減額の可能性がある旨が書かれているかを確認してください。ここが本記事で最も重要です。
②キャンセル可能期間
契約後、何日以内ならキャンセルできるのか。またその際の違約金はいくらか。期間が明記されていない契約書は要注意です。
③引き渡し日と入金日
いつ車を渡し、いつ入金されるのか。「引き渡し後◯日以内」と具体的に記載されているかを確認してください。
④名義変更の期限
いつまでに名義変更が完了するのか。記載がなければ、口頭で確認して契約書に追記してもらってください。
\ そもそも減額しない業者を選ぶ /
トラブルを避ける最も確実な方法は、契約後の減額を行わないことを明示している業者を選ぶことです。ネクステージは買取台数国内トップクラスで、金額をはっきり提示し、契約後の減額がありません。
よくある質問
Q. 車の売買にクーリング・オフは使えますか?
使えません。四輪自動車の売買はクーリング・オフの対象外です。出張査定で自宅に来てもらった場合も同様です。ただし多くの買取店は契約後3〜7日程度のキャンセル可能期間を設けているため、契約書や担当者に確認してください。
Q. 車を引き渡す前なら契約はまだ成立していませんか?
成立しています。売買契約は契約書に署名・捺印した時点で成立します。車の引き渡しや入金の有無は関係ありません。「まだ渡していないから大丈夫」という認識で他社と契約すると、二重契約になります。
Q. 買取代金が期日になっても振り込まれません。
まず契約書の入金期日を確認し、メールや書面など記録が残る方法で催促してください。電話だけで済ませないことが重要です。それでも解決しない場合はJPUCに相談できます。
Q. 名義変更されないとどうなりますか?
翌年度の自動車税の納付書が自分に届く、駐車違反や交通違反の通知が自分に届く、事故時に責任を問われる可能性がある、といったリスクがあります。契約時に名義変更の完了期限を確認し、期日を過ぎたら書面で催告してください。
最後に
契約成立後のトラブルは。全体の件数から見ると比率は少ないですが、件数としては意外と多いです。
トラブルのケースを想定して、契約交渉時に本日紹介した回避法を使えばトラブルを未然に防ぐとともに、商談を有利に進められますので、あらかじめ認識しておくことをお勧めします。
減額に関するトラブルは意外に多いため、そもそも減額をしないと公言している「ネクステージ」などの大手業者を選ぶことも有効な選択肢です。
【出典】一般社団法人日本自動車購入協会(JPUC)車売却消費者相談室/トラブル相談事例/車売却・車買取の際の注意点


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